登山において必要なスキルとして挙げられるのが「レイヤリング」です。
日常生活のように着たり脱いだりを頻繁にできない状況が多い登山中に、ベースレイヤー、ミドルレイヤー、シェルなどを適切に重ね着することで汗冷えを起こさず体力を温存することができる、というのがこのレイヤリングの利点の一つです。
さまざまなサイトでオススメの組み合わせが紹介されていますが、「寒がりか、暑がりか、どのくらい汗をかくか」など個人差によってこの組み合わせは大きく変わってくると思います。
筆者は夏でも冬でも、滝のような汗をかく極度の暑がりですが、同じくらい寒がりで、さらに末端冷え性です。
未だに答えが出ていません。試行錯誤をしている状態ですが、今現状でベストなんじゃないか?というレイヤリングを紹介します。
筆者のレイヤリング(秋〜冬)
これで登山しています。11月〜3月くらいまで、2000m以下の無雪期を想定。
■メッシュアンダー
■ベースレイヤー
■ミドルレイヤー
■アウターシェル
一つずつ解説していきます。
汗冷え対策にベースレイヤーの下に着るアンダーウェア
こういう人、最近ちょくちょく見かけます |
レイヤリングの基礎になるのが「ベースレイヤー」。肌に密着する部分になるので、「いかに肌に汗を残さないか」が重要。これは汗っかきでも、そうでない人でも同じです。ただ汗っかきだと、どこまで汗を吸い取りコントロールできるかがキモになってきます。
今まではこの役割をベースレイヤーが担ってきましたが、最近流行りのメッシュアンダーウェアの登場により、その役割が徐々に移行しつつあります。なお、メッシュアンダーもベースレイヤーの一種と考えてもいいと思います。
メッシュアンダーの役割は、簡単に言うと「肌から汗を吸い上げて、上に着ているウェアに全部移す」ということです。
発汗量コントロールに一番優れているのはミレー「ドライナミック」
疎水性が高い素材のポリプロピレンでできているドライナミックが、体感的に汗を一番外に出してくれている気がします。疎水性(水を寄せ付けない)なので濡れてもちょっと拭いたりすれば濡れ感はなくなります。ただ汗臭さも一番です。イッテQでも紹介されていました。
ドライナミックをなんとかして無臭化しようとした話
↓
汗が少ない人はファイントラック「ドライレイヤー」
撥水性(水を弾く)の素材を用いたドライレイヤー(もともとスキンメッシュという名前)は、肌サラサラ効果にはもっとも効果がありますが、処理できる発汗量で言うとそこまで多くはない印象。汗をかきまくるとビチョビチョになってしまい、あまり恩恵を受けられませんでした。カンブリア宮殿で報じられてから一時は品薄に。
暖かさ重視の人はアクリマ「ウールネット」
知名度はあまり高くないですが、高機能なウールでできたアミアミ。ドライナミックほどの汗処理量はありません。多少保水するので、拭いても濡れ感はちょっと残ります。こちらのアピールポイントは、ウール製なので濡れても若干暖かく、防臭効果に優れていること。でもアクリマウールネットは高い。なんとかしてくれ。
「着ない」という選択肢もアリ
そもそも汗冷えを感じるのは、ビチョビチョの状態で、なおかつ気温が低く風が強い、といったシチュエーションで休憩するときが多いです。
逆にずっと暑い状態で汗が引かず、どう考えても処理量を超えるような場合はメッシュアンダーを着ない、という選択肢もありだと思います。筆者は夏の低山などでは省略してしまいます。
ざっくりですが、平均気温が15℃を超えるようであればメッシュアンダーは着ないことが多いです。
ベースレイヤーは秋冬はウール、夏は化繊
筆者はウールに絶大な信頼を寄せていますが、その信頼の根拠は「汗ビチョビチョの状態で冷たい風に吹かれても、化繊ほど寒くなく、そんなに臭くならない」という点です。
秋冬の寒い時期のベースレイヤーにウールは最適だと思っており、ほぼ毎回アイスブレーカーのロングスリーブや、山と道のヘンリーネックを愛用しています。
冬に化繊を着るととにかく寒い
速乾性は、ウールよりも化繊のほうが優れています。そのため、寒い時期に速乾性の高すぎる化繊ウェアを着ると気化熱で超寒いです。
アンダーアーマーのコンプレッション系(表面がツルツルしてるヤツ)なんかを真冬に着るともう大変。上にどんなに着込んでも、気化熱でガンガン体温が奪われていきます。
一度この失敗をして、冬には二度と着ないようにしました。でもアンダーアーマーには冬用のベースレイヤーもあるんだよなー。ちょっと気になる。
夏にウールは難しい
ウールのベースレイヤーは夏でも快適に着られる!という人もいますが、筆者はちょっとキツイです。というのも保水しすぎて汗を拭いても拭いても追いつかず、ずっと濡れた状態。
さらにウールは化繊よりはデリケートなので、「絞る」ことを躊躇います(笑)。かなり良い値段するので、雑には扱いたくないんですよね。化繊も安くはないですが、なんとなく絞っても大丈夫なイメージ。スラムダンクみたいに絞ると気持ちいいです。
あと濡れても温かい分、どう考えても暑い。ずっとサウナに入ってる気分で、汗でのぼせてしまいます。
とは言え普段着や活動量の多くない休憩中にウールのベースレイヤーを着るのは大賛成なんですけど。
ということで、筆者は夏は化繊、冬はウールということになりました。
ミドルレイヤーはフリース以外考えられない
今はミドルレイヤーにフリース以外を着るのは考えらません。着るのは秋〜冬にかけてです。
夏の行動中はものすごく汗をかくので、上にフリースなんぞ着てたら暑くて耐えられません。休憩中にどうしても寒ければ、着るのは汗を完全に拭いて(もしくは着替えて)ダウンを着れば十分。ダウンは着ずにシェルだけで済ませることも多々あります。
フリースが真価を発揮するのは秋冬です。半袖や長袖のベースレイヤーだけでは寒い。かと言ってシェルを着て行動すると暑い。そんなときにベストなのがフリースです。
いろいろな種類がありますが、筆者が愛用しているのはパタゴニアの「R2ジャケット」です。
何が良いって、「毛足の長さのバランスと汗抜けが抜群」なのです。ちょっと肌寒いときに羽織って行動すればちょうど良い。汗をかいてもわりとすぐ乾き、抜けていく。でも乾くスピードは早すぎず、気化熱を奪うことも少ない。まさにベスト・オブ・ベストです。
ダウンの話が出ましたが、夏はライトダウン、秋冬はボリュームのあるダウンを着ています。夏は3000m級の朝晩を考えなければライトダウンで必要十分でした。
シェルも季節によって変える
筆者の場合、資金に余裕があるわけではないのでシェル=レインウェアです。ほとんどの人がそうだと思います。
冬はミレーの「ウォームストレッチジャケット」以外を着ることがほぼないのでこれだけで問題ありません。むしろ夏のシェルのほうが悩みます。
夏のメインシェルはパタゴニアの「レインシャドージャケット」なのですが、これでも低山などではすごく暑い。レインウェアとして持ってはいくものの、着用機会は少ないです。どうしてもシェルが必要になったときは、パタゴニア「フーディニジャケット」を持っていって着ています。
この組み合わせで困ったことはありません。ただフーディニジャケットは透湿性が皆無なので、汗をかくと不快。その前にこまめに脱ぐようにしています。
下半身はほとんど悩まない
パンツは通年ノースフェイスの「アルパインライトパンツ」一択。その下にワコール「CW-X」。靴下はダーンタフ。本当はハーフパンツを履きたいのですが、いかんせん足が太い・短い・汚いの三重苦なので、全然似合わないので捨てました。見栄え大事。
機能性も大事だけど、色も大事
汗っかきにとってウェアの色はかなり大事です。
うっかりグレーやカーキのベースレイヤーなど着ようものなら、汗ジミがみるみる広がって見苦しい(と自分で思っているだけです)。そのため選択肢は自ずと極端に濃い色か薄い色。
まぁどれ選んでも、登山開始から1時間くらいですべての面の色が変わって違うウェアを着ているみたいになるんですが。
結論:着替えるのに勝る汗冷え対策はない
濡れたら干して着替えるべし |
いろいろ書き連ねてきましたが、結局のところレイヤリングに悩んだところで汗冷えはするし、気に入ったものを着るのが一番満足度高い。汗冷えの究極の解決策は、どんなに悩んでも「着替える」に勝てるものはなかったのでした。